2006年 3月25日 幻を食べたい 今すぐに

学生時代からの友人とこんな事を話していた。
「幻の食材とか言うけど、食材が手に入っても、私達が料理したら幻の冠が取れそう」
「調理しないでもいいやつを 取り寄せればいいんじゃない?」「あったまいい〜]
「でも、家で食べたんじゃ雰囲気無いよね」「食べに行けばいいんじゃない?もう大人だし」「あったまいい〜」

そんな感じで笑いながら、検索してみるといきなりピッタリの場所が見つかってしまった。
・幻の蕎麦 冨倉そば
・店舗では無く、ほとんど民家。
・長野と新潟の県境に有る豪雪地帯の農家に伝わり、他では口にすることが出来なかったと言うところから幻と言われる。 

一瞬二人の動きが止まったかのように見えた。
お互いに今月の予定を思い出し、脳裏では財布の中身を計算しているのだろう。
恐る恐る声を出す・・・「行ける気がしない?」「うん 面白そう(笑」

早速、JRの切符を買う。今回はかっこいいからという理由でワイドビューしなので行く事に。
往復で約16000円・・・うーん 幻とは高いもの也。

また、二人とも一日しか空いていなかったので日帰りだ。
調べてみると片道3時間半かかる事から始発で出発し、終電で帰る事に。 
あぁ なんだか食材求めて走り回る美味しんぼの山岡みたいだ。
電車は7時5分発で、逆算すると5時半には起きなくてはいけない事が判明。
ちょっとキツくない?と言い出しそうだったが、言葉を飲み込んだ。幻とは簡単に手に入れてはいけないのだ。

そんな感じで当日です。

朝早くに名古屋駅に集合。寝ぼけ眼の移動は割愛させて頂きます。


飯山に到着したのは10時半すぎ。風がひんやり冷たいのですが、日差しが暖かくとてもいい天気。
早速、駅の観光案内所で観光地図を貰い、町の車工場でレンタカーを借り富倉へ行く事にしました。
車の予約をしておらず、「セダンクラスしか無いけどいいですか」と聞かれ、しょうがないよねと承諾。
出発前にちらっと「ちなみに、料金っていくらくらいですか」と聞くと、
受付のお姉さんが言いにくそうに「えーと 6時間で一万円くらいだと思います」・・・高いぜレンタカー。


幻の冨倉そば はしば食堂
走り出すとすぐに町を出て、信号の無い山道に。
すれ違う車もほとんど居らず、だんだん雪の壁が高くなっていきます。簡単な地図しか無かったのですが
一本道なので迷う事は無いだろうと壮大な景色を楽しんでいると、雪の中に看板が埋もれていました。
見落とすところだったじょ。
素朴な看板を見つけ、一気にテンションが上がる私達。なだらかな坂を上っていくと、どんどん道は細くなり
ぽつぽつと民家が現れて、その中にひょっこりありましたよはしば食堂
幻の冨倉そばは、はしば食堂とみくら食堂で食べられるんだとか。
よーし、はしば食堂にしようと、駐車場っぽい道の膨らみに車を止めてお店(民家)へ急ぎます。

玄関に入ってみると、お客さんの物と思われる靴が色々な方向を向いて脱いであります。
奥の方で人の気配があるものの、躊躇しながら「こんにちは〜」と靴を脱ぎ、すりガラスの引き戸をガラガラ。
さらにその奥に進むと、やっとエプロン姿のオバちゃんが気づいてくれました。
どうやらオバちゃん1人で切り盛りされているみたいです。

ちょうど居間が食べるスペースになっていて、仏壇やコタツが置いてあり生活感が漂います。
座敷にテーブルが3つ置かれ、家族連れと、寄り合いをしていたっぽいオジサン達が居ました。
空いているテーブルに座り、自宅気分でのんびりしているとオバちゃんがお盆を持って「はい、いらっしゃいませ」と登場。
テーブルに小鉢を並べるオバちゃんにそばと笹ずしを頼むと、笑顔でキッチンに消えました。
ずらりと並んだ漬物や山菜。食べて待ってなさいと言うことですね。

2時の方向に居るのはそばつゆです。お部屋の雰囲気はこんな感じ。↑
この小鉢たちの美味しい事、美味しい事。どれもメチャクチャ美味しいです。
10時の方向に居るのは野沢菜なんですが、初めて出会ったような気持ちになりました。
なんて言ったらいいのか、思い出しただけでご飯が食べられる美味さです。

山菜も豆も漬物も大根も全部大好きなので、コレだけで来てよかった・・と思っていると
そばと笹ずしが登場です。

あぁコレが追い求めた幻の冨倉そば。(前から追ってた訳ではありませんが)
ツヤツヤのそばは思っていたよりも透明感があって、よく見ると茶色い粒がところどころに見えます。

早速頂きますとズルズル。味を思うよりも、食感の面白さにビックリ。
コシがあると言うか、サクサクとかシャリシャリとか、ちょっと硬めで変わった感覚ですよ。
一瞬、「あれ、凍っているみたい」と思ってしまいました。うーん楽しい。

ザルに箸を伸ばして、そばを掴みズルズル。
眼下の小さなつゆの器にはそばが一杯入っていたのに、いつの間にか空っぽ。
そんな不思議な感覚を何度も楽しみながらツルツルと食べてしまい、
あっと言う間にザルには短くて掴みきれないそばの切れ端が残っているだけに。あぁ満足・・・。

また、そばを食べている時は、そばに気持ちがいってしまい気が回らなかったのですが、
そば湯を貰って飲んだ時にそばつゆの美味しさにハッとしました。
暖かいとろっとしたそば湯が、濃厚だったつゆをなだめると、まろやかな甘さに、醤油のいい香り。
湯で伸ばされているのに全然薄いと感じなくて、伸ばされるのが得意なそばつゆって感じです。うわー美味しいなー。
例えは変ですが、美味しいおせんべいみたいな味がしました。

確かにすごく美味しいのだけど、それと同時に食べるのが楽しいそば。
この冨倉そばはそば粉のつなぎにオヤマボクチという山ゴボウの葉の繊維を使用しているらしいです。
詳しい事は調べてみてください。(オイオイ)

そして可愛らしい笹ずし。少し独特の香りがしましたが美味しく頂きました。
ひょっこり乗っているクルミも、リボン的役割の生姜も田舎っぽくて好きです。

食べ終わると他にお客さんは居らず、先客の食器を片づけながら「どこから来なさったの」とオバちゃん。
「今は静かだけど、これから観光客が凄く多くなるよ」とか「運転免許取りたての孫がもうすぐ来るんだわ」と
ツヤツヤのお肌がまぶしくて、もてなし上手なオバちゃんと話していると、時間が過ぎるのが早いです。

お店の成り立ちを聞いてみると、「大きな声じゃ言えないけどさ、昔は官々接待なんかでね、お偉いさんが来たんだよ」
「それから役所の人に頼まれて、厨房だけ設備を整えてお店にしてさ、今は色んな所からお客さんが来るよね。」と
色々教えてくれました。さあ帰ろうかと思って立ち上がると、いきなり「もっと野沢菜食べる?」とオバちゃん。
食いしん坊なので即座に「はい」と答えて、お代わりを頂いてしまいました。

他にお客も居ない静かな居間で「そばの季節ではないけど、この時期に来て良かったなぁ」としばしぼんやり。
また来たいねと話しつつ、オバちゃんにお礼を言って玄関を出ると、先ほど話していたお孫さんの車が到着。
玄関の小窓から「お孫さん、到着されましたね」と言うと、一段とニコニコして手を振ってくれました。



さあ、幻のそばを食べて気分もお腹も満足です。
時間もある事だし、この6時間一万円の車を乗り回してやろうとアクセルを踏み込みます。
綺麗な景色に興奮し、道路に6時間一万円の車をエンジンつけたまま放り出して雪の野原を犬並みに駆け回り
飯山を思いっきり満喫しました。
お隣の県まで車でほんの数分の場所です。
飯山に戻り、川辺を走る。
おしんが川を下ってきそうですよ
自然の中にバスが捨ててある。オブジェと見れば芸術的。

一通り飯山を満喫して、さあ、3時のおやつにラーメンですよ。
飯山駅近くのイナリ食堂へ。ここもネットで調べると、すぐに出たお店で、すごく美味しいんだとか。
地図だとここら辺だよなぁとフラフラしていると、ありましたよ 立派な食堂が。
すぐに見つかったよ。

こんな時間だから空いているよねと車を停め、暖簾をくぐって引き戸をガラガラ。
店内はごく普通の食堂。テーブル席が3つ程と、奥にはやや広めのお座敷が。
お客さんは居らず、「こんにちは〜」と小さな声で囁きつつ、疲れからかお座敷にのそりと座り込みました。

私たちの気配に気が付いたのか、「いらっしゃませーお決まりになりましたら呼んでくださいー」と若いお姉さん。
「はいよ、わかりましたよー」とメニューを見てみると、なんと種類の豊富な事。
色々と目移りしましたが、中華そば(600円)と美味しいと聞いたもつ煮(小)を注文しました。

「うにゃーん 疲れたにょー」と変なテンションでドロドロになっていると、お姉さんがささっとテーブルに
漬物を置いていってくれました。この地方のお決まりなんでしょうね。
大根ベリー美味しい。
この漬物もすごく美味しい。漬物が美味しいと田舎に来たな!って思いますよね。(←ちょっと偏見かも)
大根をコリコリしていると、もつ煮が登場です。
おや、いい照りだ。
なんだか美味しい豚骨の香りがするぞと思って箸をのばし、パクリ。
お・・・・ おぱーーーー! 美味しい!!

もう、どうなってるの?と思うほど美味しい。間違いなく美味しい豚骨のスープですよ。
こうなると肉が柔らかくて美味しいのは当然で、問題は彼のまとっているタレなんです。
これって、麺入れたらすごく美味しい豚骨ラーメンになるんじゃないの?食べたい!!
そう思い、メニューを再度見ますが・・・無い。
豚骨ラーメンは無い・・・。

もっ もったいなーい(汗

なんて言うか、まろまろでグイグイって感じの豚骨なんですよ。いやー・・好きだなぁ。
スキスキメーターが振り切って、首がつりそうです。すきーっ すきーっ うまーっ。

そんな風に感動していると中華そばが登場。
見た目からして美味しそう。
おや、丼のすみに赤いツブツブが見えるぞ。(3時から4時の方向に)
もしかして唐辛子が入ったピリッと辛い系なのかな?と思いつつズルズル。

ありゃ全然辛くない。逆にお魚が楽しそうにしていますよ。
楽しそうと言っても、煮干をポリポリ食べながらコタツで魚の尻尾を握ってブンブン振り回しているような、
そんな楽しさです(?) 回されてる魚はうそーんって感じですよね。(!?)

ほんのり甘いスープで、もっさりとボリュームのある麺はもっちり。
結構、量が多いけどするっと食べてしまいそうだなと思っていると、先ほどの赤い粒の正体が・・・。
なんて私は馬鹿なんだ。

丼に書かれたイナリの文字。コレじゃ辛いはずが無い(汗

きっと今までに176人くらいは同じように思った人が居るだろうな、と どうでもいい事を思いつつ、
チャーシューにかぶりつきます。メシメシと歯ごたえのある肉。うわ、美味しい。
疲れてのんびりしていた脳が、ちょっと活性化された気がします。
深い事は考えずにズルズル食べてご馳走様。とても美味しいラーメンでした。

それにしても美味しいもつ煮。
ふと空になった小皿を見ると、ロウソクになるんじゃないかと思うほど脂が固まり白くなっています。
おぉ、なんと男らしい固まりっぷり。どんな風に煮込んだらこんな風になるだろう、
このもつ煮をご飯にかけて食べたら、もうウッハウハだな、と思いつつお店を後にしました。

「美味しかったねぇ また来たいね」と話しつつ、レンタカーにガソリンを入れます。500円分入りました。
さぁ車の返却に。口には出しませんでしたが、必ず値切ってやるぞとかなり意気込んでいます。
「ただいま戻りました〜」と事務所を覗くと、朝居た受付のお姉さんが。
「おかえいなさい じゃあ精算しますね」と利用時間を指折り数えています。

「値切るぞ 値切るぞ 値切れるぞ」と新興宗教並に脳内で唱えつづけていた私が口を開こうとした瞬間、
お姉さんが「えっと、本来ですと・・このお値段に二人分の保険も付いてくるんですが(値段表を指さして)
今回は、時間も短いですし サービスで保険も入れて5000円でいいです。」

( ゚д゚) は・・・半額?!


 ・・・と言う訳で、人生一度は幻をっ  飯山いいとこ一度はお行き!
   
      豪雪、ど田舎 なんでもござれ   足は石澤レンタカーで決まりだね!(汗 

乙女検索用 ♪数
イナリ食堂 マーク無し 街の食堂で客層はおっちゃん多し。でも混雑時間帯を避ければ意外と大丈夫っぽい。


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